「副業の収入が20万円以下なら確定申告しなくていい」は本当?
「副業で20万円以下なら、申告しなくていいんですよ」——YouTubeやSNSで、こんなセリフを耳にしたことはありませんか?
たしかに国税庁のルールにも「20万円」という数字は出てきます。でも、この噂をそのまま信じて何もしないと、あとから税金の請求が来て、会社に副業が知られる——そんなことにもなりかねません。
この噂、ホントなのでしょうか。国税庁の公式情報と法律まで遡って検証しました。
税金の言葉、先に4つだけ この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明しておきます。
- 確定申告 = 1年間の所得と税金を自分で計算して、税務署に書類を提出する手続き(毎年2月16日〜3月15日)
- 住民税 = お住まいの都道府県・市区町村に払う税金。会社勤めの人は、ふつう給料から天引きされています
- 年末調整 = 会社が年末に、あなたの所得税を精算してくれる手続き。会社員ならほぼ全員が対象です
- 申告不要 ≠ 非課税 = 「申告しなくていい」は「税金がかからない」ではありません。ここ、とても大事です
結論(先に3行で)
- 「20万円以下なら所得税の確定申告は不要」は本当——ただし①会社1か所から給料をもらい年末調整済み、②比べるのは「収入」ではなく「所得(儲け)」、という条件つきです [1][2]
- 住民税にはこの特例がない——副業の儲けが1円でもあれば、市区町村への住民税の申告は必要。しかも税金はかかります(申告不要≠非課税) [3]
- 「申告一切不要」に広げるとウソになる——所得税と住民税は別々の手続きです [3]
つまり判定は「条件つきホント」。「所得税だけの話」という条件を外して「何もしなくていい」と解釈すると、途端に間違いになります。
いちばん間違えやすいところ:「収入」と「所得」は違う
「20万円以下かどうか」を判定するとき、何と20万円を比べるのか。ここが一番の間違いポイントです。
- 収入 = 受け取ったお金の合計額
- 必要経費 = その収入を得るためにかかった費用(材料費、通信費、交通費など)
- 所得 = 収入 − 必要経費 = いわば儲け
具体例で見てみましょう。
| ケース | 収入 | 必要経費 | 所得(儲け) | 所得税の確定申告 |
|---|---|---|---|---|
| Aさん: フリマで売上25万円、仕入れ等10万円 | 25万円 | 10万円 | 15万円 | 不要(所得が20万円以下) |
| Bさん: デザイン受注30万円、経費5万円 | 30万円 | 5万円 | 25万円 | 必要(所得が20万円超) |
Aさんは「収入25万円」なので20万円を超えていますが、所得で比べると15万円なので確定申告は不要です。逆にBさんは、経費を差し引いても所得が25万円あるので申告が必要です。
「もらった額が20万円超えたから申告しなきゃ」と慌てる必要はなく、「儲けが20万円超えたら申告」と覚えるのが正解です(給与1か所・年末調整済みの場合)。
※ ただしAさんのような人でも、医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得もまとめて申告しなければなりません。「還付申告するなら全部出す」がルールです [6]。
副業がパート・アルバイトなら、ルールが少し違う
副業がパートやアルバイト(給料をもらう形)の場合は、経費を引くことができません。法律(所得税法121条)は、2か所以上から給与をもらう人について、次のように定めています。
給与を2か所以上から受けている人で、年末調整を受けない従たる給与等の金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額との合計額が20万円を超える人 [6]
つまり副業先の給料は「経費を引いた額」ではなく「収入金額」のままで数え、他の副業の儲けと合計して判定します。これは目安や解釈ではなく、法律の条文そのものです。
一方、副業でパートやアルバイトをしている場合は、所得金額ではなく、収入金額が20万円以下であれば原則として確定申告が不要です。 [3]
たとえばパート収入12万円とフリマの儲け10万円があれば、合計22万円で申告が必要です。「それぞれ20万円以下だから大丈夫」ではありません。
なお、給料には「給与所得控除」という大きな控除(収入から自動で差し引ける額)があるため、副業のパート収入が20万円程度なら、所得税の額自体はわずかになるのが普通です。
「20万円ルール」の正体
国税庁のタックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」には、次のとおり書かれています。
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額( 給与所得、 退職所得 を除く。)の合計額が20万円を超える人 [1]
少し堅い文章なので訳すと、「20万円以下なら申告しなくていい」が成り立つには、実は3つの条件がそろっている必要があります。
- 給料は1か所の会社からもらっている(2か所以上だと前述のとおり別のルールになります)
- その給料で年末調整をしてもらっている
- 副業などの儲け(所得)の合計が20万円以下
ネットオークションやフリーマーケットなどの副収入についても、国税庁はタックスアンサーNo.1906で同じ考え方を示しています。
その給与所得以外に副収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には、確定申告をすれば税金が還付される人を除いて、確定申告が必要となります [2]
なお「還付される人」= 払いすぎた税金が戻ってくる人は、20万円以下でも確定申告をした方が得です(医療費控除や住宅ローン控除の初年度などが典型)。
ここまでは噂のとおりです。問題は、その先です。
落とし穴① 住民税に「20万円ルール」は無い——しかも税金はかかる
所得税の確定申告をすれば、そのデータは市区町村にも伝わり、住民税も自動で計算されます。ところが確定申告をしない場合、住民税の申告は自分で別途しなければなりません。
住民税には、所得税のような「20万円以下なら申告しなくていい」という特例がそもそも存在しないからです。
副業の所得が20万円以下の場合に申告が不要となるのは所得税に限られます。住民税には所得税のような「20万円以下で申告不要」という特例がないため、副業の所得が20万円以下であっても申告が必要です。 [3]
そして冒頭の「申告不要≠非課税」の話。所得税の申告が不要なだけで、住民税は普通にかかります。住民税の所得割の標準税率は10%(道府県民税4%+市町村民税6%)なので、目安として副業の儲け15万円なら約1万5千円の住民税が発生します [7]。
「え、そのくらいなら申告しなくても…」と思うかもしれません。でも、放っておくと——
住民税の申告を忘れると、住民税額に加えて延滞金が科せられるおそれがあります。 [3]
ここは正確に説明しておきます。住民税は市区町村が税額を決めて通知する仕組みなので、申告しなかったこと自体に延滞金がつくわけではありません。後から市区町村が副業を把握して課税し、その納期限に遅れると延滞金が発生します。割合は本則では年14.6%ですが、現在は特例で引き下げられており、令和8年は納期限後1か月以内が 年2.8%、それ以降が 年9.1% です [5]。
これとは別に、申告義務を守らないことへの制裁として、条例により10万円以下の過料が定められている自治体があります。加えて、
住民税の申告を行わないと、各種証明書の発行や手当を受給できなくなるなどの影響が出る可能性があります。 [3]
所得証明書が出せない、手当の判定ができない、といった生活上の影響の方が、実は痛いケースも多いのです。
住民税の申告は、所得税の確定申告よりずっと簡単です。お住まいの市区町村役場の窓口や郵送でできます(多くの自治体で期限は毎年3月15日)。必要なのは副業の収入と経費がわかるメモ程度です。
落とし穴② 確定申告すると、副業が会社に知られるルートがある
もうひとつ、よくある心配ごと。「住民税の申告をすると、会社に副業がバレるのでは?」——これも半分ホント・半分ウソです。
会社員の住民税は、ふつう給料から天引きされています(これを「特別徴収」といいます)。総務省の資料によると、確定申告書で特別な申出をしない限り、副業分の住民税も給料に上乗せして天引きされ得るとされています。天引き額が急に増えれば、会社の経理が「あれ?」となる——これが「バレる」ルートです。
でも、防ぐ方法があります。
普通徴収の方法によって徴収されたい旨の申出がある場合は、この限りではないとされている。 [4]
「普通徴収」とは、納付書や口座振替で自分で払う方法のこと。つまり、確定申告書の第二表にある「住民税・事業税に関する事項」で 「自分で納付」にチェックを入れれば、副業分の住民税は給料から天引きされず、自分で払う ことができます。この欄を知らずに提出すると、翌年6月の給与明細を見て経理に気づかれる——というわけです。
ただし、3つの注意があります。
- 「自分で納付」を選べるのは、給料・年金以外の所得だけです。副業がパート・アルバイト(給料)の場合はこの選択の対象外で、副業分の住民税は本業の給料と合算して天引きされるのが原則です [7]
- 市区町村によっては、会社員の「自分で納付」の申出を認めない(天引きを優先する)運用があります。また、この選択は期限内の申告でないと受け付けない自治体もあります。「必ずバレない」と断言できるものではありません [7]
- 住民税以外からも知られるルートは残ります(社会保険の加入状況、会社の副業規程への届出など)
見落としがちな例外チェックリスト
「20万円以下なら申告不要」には、さらに細かい例外があります。当てはまるものがあれば、金額に関係なく確定申告が必要です。
| 例外 | 何が起きるか |
|---|---|
| 同族会社の役員が、自分の会社から貸付金の利子や不動産の賃料をもらっている | 20万円以下でも申告が必要 [6] |
| 還付申告(医療費控除・住宅ローン控除の初年度など)をする | 20万円以下の副業所得も一緒に申告する [6] |
| ふるさと納税のワンストップ特例を使っている | 確定申告をするとワンストップ特例の申請は無効になる。申告するなら寄付金控除も忘れずに [8] |
| 給料の収入が2,000万円超 | 副業の有無にかかわらず申告が必要 [1] |
| 年の途中で退職して年末調整を受けていない | 「年末調整済み」の前提が崩れるので、申告が必要になり得る |
| 公的年金を受給している | 年金には別の申告不要制度(年金収入400万円以下+他の所得20万円以下)があり、ルールの組み合わせが違う [6] |
では、どうすればいいのか(こうすればいい)
副業・副収入がある会社員は、この表で自分のケースを確認してください。
| 副業の儲け(所得) | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 20万円以下(給与1か所・年末調整済) | 不要(還付がある場合を除く) | 必要(市区町村へ) |
| 20万円超 | 必要(翌年2/16〜3/15) | 確定申告をすれば不要(データが連動する) |
- 20万円以下でも: 毎年2〜3月に、市区町村役場で「住民税の申告」をします。窓口や郵送で手軽にできます。住民税そのものはかかるので、納付も忘れずに
- 確定申告をする場合: 第二表で「自分で納付」にチェックするかどうかを、自分の状況で判断します(選べるのは給料・年金以外の所得だけ)
- 20万円と比べるのは「所得」: 収入から必要経費を引いた額で判定します。副業がパート・アルバイトなら「収入金額」で数え、他の副業の儲けと合計します
- 迷ったら: 税務署や市区町村の税務窓口は無料で相談できます。「自分は申告が必要か」の相談は、確定申告の期間外でも受け付けています
まとめ
「副業20万円以下なら申告不要」は、所得税の確定申告に限れば、条件つきでホント。でも住民税の申告は別途必要で、税金もかかります。20万円と比べるのはもらった額(収入)ではなく儲け(所得)——ただしパート・アルバイトの副業は収入金額で数えます。さらに「会社に知られるか」は、申告書の一欄のチェックで変わります。
噂は「条件つきホント」の形をしているときが一番危ない。条件を外した瞬間にウソになるのに、なんとなく信じてしまうからです。数字や条件が出てくる税金の話ほど、「その数字、何と比べてるの?」「それ、何の税金の話?」と一度立ち止まってみてください。
出典
- [1] 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
- [2] 国税庁 タックスアンサー No.1906「給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」
- [3] freee「副業所得20万円以下でも確定申告と住民税の申告は必要?」
- [4] 総務省「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」(地方税法321条の3関連・PDF)
- [5] 総務省「加算金、延滞金、還付加算金」
- [6] ぎょうせい「確定申告Q&A 確定申告が必要な人・不要な人の条件を解説」(所得税法121条関連)
- [7] 奈良市「個人市民税」(申告・納税の方法)
- [8] 国税庁「ふるさと納税をされた方へ」(ワンストップ特例)
※ 本文は2026年10月4日時点の法令・公式情報に基づきます。
訂正・改訂記録
- 2026-10-04 v3: AI検証(ゼイモル)の指摘を受け改訂。①パート副業の「収入20万円」を「目安」から法令上の要件(所得税法121条)として整理、②延滞金の記述を修正(申告漏れ自体に延滞金はかからない・現行の特例割合は令和8年で年2.8%/9.1%・条例の過料を追記)、③「自分で納付」は給与所得以外の所得のみが対象である旨を追記、④例外チェックリスト(同族会社役員・還付申告・ふるさと納税ワンストップ等)を追加、⑤判定を「半分ホント」から「条件つきホント」へ変更、⑥「申告不要≠非課税」と住民税額の目安を追記
- 2026-10-04 v2: 収入/所得の違いの具体例、用語解説ボックスを追加
- 2026-10-04 v1: 初版